「サラリーマン法人」時代の到来

「サラリーマン法人」時代の到来

(1)「サラリーマン法人」とは?
「サラリーマン法人」という言葉を耳にされたことはありませんか?
これまでも、契約社員、派遣社員、パート、アルバイトなど、企業は人件費を抑えるために様々な雇用形態を利用することによって、企業利益の安定・確保を図ってきましたが、最近にわかに注目を浴びているのが、「サラリーマン法人」です。
「サラリーマン法人」とは、従業員が会社を退職し、自ら会社を設立することによって、元の会社と業務委託契約を締結し、給料ではなく報酬を受け取る形態をいいます。

(2)会社の人件費軽減に
会社にとって人件費とは、給与、賞与、通勤費、社会保険料、福利厚生費等をさしますが、この人件費は売上高にかかわらず発生する固定の経費となります。このまま社会保険料率が上昇していけば、企業の利益を圧迫する要因ともなります。「サラリーマン法人」にすれば、会社にとっての固定費が、仕事量に応じて変化する「変動費」に変わり、企業利益に対するリスクが減少します。

(3)会社の消費税軽減に
ここでは詳細は割愛しますが、売上高が5千万円超の企業においては、業務に対する対価を 給与として支払うか、業務委託費として支払うかで消費税の負担が大きく異なってきます。今後消費税率が上昇していけば、その差は企業の存続にかかわる金額となることも考えられます。

(4)なぜ「法人」か?
個人事業主として業務委託契約を結んだ場合、以前のサラリーマン時代と同じ業務に携わっていると、形だけの業務委託契約と判断され、実質的には雇用契約とみなされてしまう恐れがあります。これを「法人」対「法人」の契約にすれば、サラリーマン時代との違いを明確にできます。さらに、現在時限立法でいわゆる「1円会社」の設立が可能となっており、平成18年4月からは商法改正により、最低資本金制度が撤廃される見込みですので、世の中は「サラリーマン法人」が設立しやすい方向へ向かっています。

(5)サラリーマンにとっては?
メリットとしては、実力があれば、サラリーマン時代の「兼業禁止」規定の拘束がなくなるので、公然と複数の企業と取引することが可能となり、所得の増加が見込まれます。デメリットとしては、雇用関係があれば労働法の保護があるため簡単に辞めさせられることはありませんが、業務委託契約の場合には契約を打ち切られる可能性があります。

(6)最後に
好むと好まざるにかかわらす、今後「サラリーマン法人」は増えていくでしょう。いずれにせよ、「サラリーマン法人」時代には、企業・サラリーマン双方が自らの立場を見直すことを余儀なくされるでしょう。