消費税転嫁対策特別措置法-値ごろ感を出せる価格表示の特例とは?

消費税転嫁対策特別措置法

消費税転嫁対策特別措置法-値ごろ感を出せる価格表示の特例とは?

消費税転嫁対策特別措置法の5つのポイント

消費税転嫁対策特別措置法は、今回の消費税率引き上げに際し、円滑かつ適正な転嫁ができるように、中小企業をサポートするために制定された法律です。 施行は、平成25年10月1日から平成29年3月31日までです。 この消費税転嫁法のポイントは次の5つです。

  1. 消費税の転嫁拒否等の行為(減額、買いたたき等)が禁止されます
  2. 消費税に関連するような形での安売り宣伝や広告を行うことが禁止されます
  3. 「総額表示」義務が緩和され、「外税表示」「税抜き価格の強調表示」が認められます
  4. 中小企業が共同で価格転嫁すること(転嫁カルテル)や、 表示方法を統一すること(表示カルテル)が認められます
  5. 国民に対する広報、通報者の保護、態勢の整備は国等が責任をもって行うことになります

今回は、ポイント3の「値ごろ感を出せる価格表示の特例」についてレポートします。

「総額表示」義務が緩和され、「外税表示」「税抜き価格の強調表示」が認められます

平成25年10月1日以降,消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保や事業者の値札の貼り替えなどの務負担に配慮する観点から,表示価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じていれば、「税込価格」を表示しなくてもよいとする特例が設けられます。また、税抜価格と税込価格を併記する場合でも、従来は認められていなかった税抜価格の強調表示も認められることになりました。

総額表示義務とは?
消費者に商品の販売やサービスの提供を行う課税事業者には、値札やチラシ等においてあらかじめその価格を表示する際に、消費税額を含めた価格を表示する義務があります。これを「総額表示義務」といいます。なお、免税事業者や事業者間の取引には総額表示義務はありません。

「外税表示」が認められます

転嫁対策特別措置法では、円滑かつ適正な転嫁や事業者の値札の変更等に係る事務負担軽減のために、総額表示義務の弾力的な運用を行います。

具体的には、税込み価格を表示しなくてよい、つまり、「外税表示」が時限的に認められます。

消費税率引き上げ後も本体価格が変わらないので、値札の変更等の事務負担を軽減したり、値ごろ感を維持することができます。

ただし、特例として認められるには、消費者に対して、「現に表示する価格が税込み価格であると誤認されないための措置を講じている」という要件を満たす必要があります。

まずは消費者に誤解や勘違いをされないための対策が必要です。政府公表のガイドラインに「誤認防止措置の具体例」が示されていますので、確認しましょう。

 税抜価格のみを表示する場合の誤認防止措置の具体例

1.個々の値札等において税抜価格であることを明示する例

  • ○○○円(税抜き)
  • ○○○円(税抜価格)
  • ○○○円(本体)
  • ○○○円(本体価格)
  • ○○○円+税
  • ○○○円+消費税

2.店内における掲示等により一括して税抜価格であることを明示する例

  • 店内における表示の例
    個々の値札等においては「○○○円」と税抜価格のみを表示し、別途、店内の消費者が商品等を選択する際に目に付き易い場所に、明瞭に、「当店の価格は全て税抜表示となっています。」といった掲示を行う。
  • チラシ、商品カタログ、インターネットのウェブページ等における表示の例
    チラシ、商品カタログ、インターネットのウェブページ等において、個別の 商品価格の部分には「○○○円」と税抜価格のみを表示し、別途、消費者が商 品を選択する際に目に付き易い場所に、明瞭に、「本チラシ(本カタログ、本ウェブページ等)の価格は全て税抜表示となっています。」といった表示を行う。

 旧税率に基づく税込価格等で価格表示されている場合の誤認防止措置


1.新税率の適用後においても一時的に旧税率に基づく税込価格の表示が残る場合

  • 個々の値札等においては「○○○円」と旧税率に基づく税込価格を表示し、別途、店内の消費者が商品等を選択する際に目に付き易い場所に、明瞭に、「旧税率(5%)に基づく税込価格を表示している商品については、レジにてあらためて 新税率(8%)に基づき精算させていただきます。」といった掲示を行う。

2.新税率の適用前から新税率に基づく税込価格の表示が行われる場合

  • 個々の値札等においては「○○○円」と新税率に基づく税込価格を表示し、別途、当該商品の置かれている棚等の消費者が商品等を選択する際に目に付き易い 場所に、明瞭に、「既に新税率(8%)に基づく税込価格を表示している商品については、3月 31 日まではレジにて5%の税率により精算させていただきます。」といった掲示を行う。

 誤認防止措置が講じられていることにはならない例

  • 誤認防止のための表示が、店内のレジ周辺だけで行われている
  • 商品カタログの申込用紙だけに記載されている
  • インターネットのウェブページにおける決済画面だけに記載されていることなどにより、消費者が商品を選択する際に認識できない形で行われている

 「税抜き価格の強調表示」が認められます

転嫁対策特別措置法では、総額表示を続ける場合にも転嫁対策の手当をしています。

まず、税込み価格に併せて、「税抜き価格」または「消費税の額」を表示することも可能であることを明確にしています。

次に、「税込み価格が明瞭に表示されているとき」は、税抜き価格を強調して表示しても、不当表示にあたらないことが明確化されています。

この2つの特例で、実際にどのような表示が認められるのか、その詳細は、政府より公表されているガイドラインで確認しましょう。

1.明瞭に表示されているといえる例

税抜き価格の強調表示

2.明瞭に表示されているとはいえない例

税抜き価格の強調表示2

適用開始日の再確認

「外税表示」「税抜き価格の強調表示」は、転嫁対策特別措置法の施行日である

平成25年10月1日から

認められますので、消費税率引き上げ日(平成26年4月1日)より前から、余裕をもって早めに準備に取りかかりましょう。

また、いずれの特例措置も適用期限は平成29年3月31日までとなります。