消費税率改正Q&A(施行日前後の取引に係る税率の適用関係)

消費税率改正Q&A

消費税率改正Q&A(施行日前後の取引に係る税率の適用関係)

(施行日前後の取引に係る消費税法の適用関係の原則)

問1  施行日前後の取引に係る消費税法の適用関係を教えてください。

【答】

新消費税法は、施行日以後に国内において事業者が行う資産の譲渡等並びに施行日以後に国内において事業者が行う課税仕入れ及び保税地域から引き取られる課税貨物(以下「課税仕入れ等」といいます。)に係る消費税について適用し、施行日前に国内において事業者が行った資産の譲渡等及び課税仕入れ等に係る消費税については、なお従前の例によることとされています(改正法附則2)。

したがって、施行日の前日(平成26年3月31日)までに締結した契約に基づき行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等であっても、施行日以後に行われるものは、経過措置が適用される場合を除き、当該資産の譲渡等及び課税仕入れ等について新消費税法が適用されることとなります(経過措置通達2)。

(施行日の前日までに購入した在庫品)

問2  施行日の前日(平成26年3月31日)までに仕入れた商品を施行日以後に販売した場合、消費税法の適用関係はどのようになりますか。

【答】

新消費税法は、経過措置が適用される場合を除き、施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等について適用されます(改正法附則2)。

したがって、照会のように、施行日の前日(平成26年3月31日)までに仕入れた商品を施行日以後に販売する場合には、当該販売については新消費税法(新税率)が適用されますが、商品の仕入れについては施行日の前日までに行われたものですから、課税仕入れに係る消費税額は旧消費税法の規定に基づき計算することとなります(経過措置通達3)。

(決算締切日の取扱い)

問3  当社(3月決算法人)では、毎年3月20日を決算締切日としており、法人税基本通達2-6-1《決算締切日》の取扱いを適用していますが、この場合の消費税法の適用関係はどのようになりますか。

【答】

法人税基本通達2-6-1《決算締切日》の取扱いを適用している場合であっても、施行日前に行われた資産の譲渡等及び課税仕入れ等については旧消費税法が適用され、施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等については、経過措置が適用される場合を除き、新消費税法が適用されます(改正法附則2)。

したがって、照会の場合、平成26年3月21日から平成26年3月31日までの間に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等については旧消費税法が適用されることとなります。

なお、継続的に、売上げ及び仕入れの締切日を一致させる処理をしている場合には、平成26年3月21日から平成26年3月31日までの間の売上げ及び仕入れについては、平成26年4月分の売上げ及び仕入れとして、消費税の申告をして差し支えありません。

(施行日を含む1年間の役務提供を行う場合)

問4  平成26年3月1日に、同日から1年間のコピー機械等のメンテナンス契約を締結するとともに、1年分のメンテナンス料を受領した場合、消費税法の適用関係はどのようになりますか。

【答】

役務の提供に係る資産の譲渡等の時期は、物の引渡しを要するものにあってはその目的物の全部を完成して引き渡した日、物の引渡しを要しないものにあってはその約した役務の全部を完了した日とされています(基通9-1-5)。

照会の役務の提供は、物の引渡しを要しないものですから、資産の譲渡等の時期は役務の全部を完了する日である平成27年2月28日となります。

したがって、施行日以後に行う課税資産の譲渡等となりますから、原則として新消費税法(新税率)が適用されます。

ただし、契約又は慣行により、1年分の対価を収受することとしており、事業者が継続して当該対価を収受したときに収益に計上しているときは、施行日の前日(平成26年3月31日)までに収益に計上したものについて旧消費税法(旧税率)を適用して差し支えありません。

(施行日前後の返品等の取扱い)

問5  販売商品の返品について、例えば、4月中に返品を受けた商品は、3月中の販売に対応するものとして処理している場合、平成26年4月中の返品については平成26年3月中の販売に対応するものとして、旧消費税法の規定に基づき売上げに係る対価の返還等に係る消費税額の計算を行って差し支えないですか

【答】

施行日前に行った商品の販売について、施行日以後に商品が返品され、対価の返還等をした場合には、旧消費税法の規定に基づき売上げに係る対価の返還等に係る消費税額の計算することとされています(改正法附則11)。

照会のように、合理的な方法により継続して返品等の処理を行っている場合には、事業者が継続している方法により、売上げに係る対価の返還等に係る消費税額を計算しても差し支えありません。

なお、このように取り扱う場合には、取引当事者間において取り交わす請求書等に適用税率を明記し、取引の相手方は当該請求書等に記載された税率により仕入れに係る対価の返還等に係る消費税額を計算することとなります。

(施行日をまたぐ資産の譲渡等)
(事業者間で収益・費用の計上基準が異なる場合の取扱い)

問6  当社(A社)では、検収基準により仕入れを計上しています。
ところで、当社と取引先(B社)の収益、費用の計上基準の違いにより、当社が、4月初旬に検収基準により仕入れを計上したものであっても、取引先が出荷基準によっている場合、施行日(平成26年4月1日)前に出荷された商品は旧税率(5%)が適用されるので、取引先(B社)から、旧税率(5%)に基づく消費税額等が記載された請求書が送付されてくるものと考えられます。
このような場合、当社の仕入税額控除の計算はどのように行えばよいですか。
【答】新消費税法は、経過措置が適用される場合を除き、施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等について適用されます(改正法附則2)。 照会の事例は、B社がA社に対して、施行日前に行った課税資産の譲渡等ですので、A社においても、旧消費税法の規定に基づき仕入税額控除の計算を行うこととなります。

(月ごとに役務提供が完了する保守サービスの適用税率)

問7  当社は、事務機器の保守サービスを行っており、保守サービスの年間契約(月額○○円)を締結しています。
この保守サービスについては、月ごと(20日締め)の作業報告書を作成し、保守料金を請求しています。
この場合、施行日(平成26年4月1日)をまたぐ3月21日から4月20日までの期間に対応する保守サービスについては、新税率(8%)が適用されますか。
【答】照会の役務提供契約は、月ごとに役務提供が完了するものと考えられます。 したがって、平成26年3月21日から同年4月20日までの役務提供については、その役務提供の完了した日である4月20日における税率(8%)が適用されることとなります。 (注)1か月分の料金を日割り計算する等により、3月21日~3月31日の期間に相当する金額を算出することも可能ですが、照会のような取引は、毎月20日締めとしている1か月分の計算期間が一の取引単位であると認められることから、その取引単位ごとに同一の税率が適用されます。

(保守料金を前受けする保守サービスの適用税率)

問8  当社は、事務機器の保守サービスを行っており、保守サービスの契約期間を平成26年4月以後1年間とする保守契約を平成26年3月31日までに締結するとともに、同日までに一括して1年間の保守料金を前受けしています。
なお、この保守契約は、月額○○円として保守料金を定めており、中途解約があった場合には、未経過期間分の保守料金を返還することとしています。
この保守契約に係る取引について、1年間分を一括収受し、前受金として計上したものを毎月の役務提供の完了の都度、収益に計上することとしていますが、この場合において、施行日(平成26年4月1日)以後、毎月の役務提供の完了の都度、収益に計上する際の適用税率はどのようになりますか。
【答】役務の提供による資産の譲渡等の時期は、物の引渡しを要するものにあっては、その目的物の全部を完成して引き渡した日、物の引渡しを要しないものにあっては、その約した役務の全部を完了した日とされています(基通9-1―5)。また、前受金に係る資産の譲渡等の時期は、現実に資産の譲渡等を行った時とされています(基通9-1―27)。 照会の保守契約は、契約期間は1年間であるものの、保守料金が月額で定められており、その役務提供が月々完了するものですので、この保守契約に基づき計上した前受金に係る資産の譲渡等の時期は、現実に毎月の役務提供が完了する時であり、その時の消費税率が適用されます。 したがって、施行日以後、役務提供が完了するものについては、新税率(8%)が適用されることとなります。

(所有権移転外ファイナンス・リース取引における分割控除)
(リース資産の分割控除)

問9  所有権移転外ファイナンス・リース取引(所得税法施行令第120条の2第2項第5号又は法人税法施行令第48条の2第5項第5号に規定する「リース取引」をいう。)につき、賃借人が賃貸借処理(通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理をいう。)をしている場合には、そのリース料について支払うべき日の属する課税期間における課税仕入れとする処理(以下「分割控除」という。)が認められています。
平成26年3月31日までに引渡しを受けたリース資産について分割控除する場合は、平成26年4月1日以後の支払いに係る分割控除についても旧税率(5%)に基づき行うこととなりますか。
【答】所有権移転外ファイナンス・リース取引については、リース資産の譲渡として取り扱われますので、消費税率は、当該リース資産の譲渡があった時の税率が適用されます。 したがって、平成26年3月31日までに引渡しを受けたリース資産に係る分割控除については、旧消費税法の規定(旧税率(5%))に基づき行うこととなります。

(部分完成基準による資産の譲渡等)
(部分完成基準が適用される建設工事等の適用税率)

問10  建設工事等(工事進行基準の規定を受けるものを除く。)については、基通9-1-8《部分完成基準による資産の譲渡等の時期の特例》により、一定の事実がある場合には、その建設工事等の全部が完成しないときにおいても、その課税期間において引き渡した建設工事等の量又は完成した部分に対応する工事代金に係る資産の譲渡等の時期については、その引渡しを行った日とすることとされています。
このような部分完成基準が適用される建設工事等に対する消費税率の適用関係はどのようになるのですか。
※ 当該建設工事等は、平成25年10月1日以後に契約を締結したものであり、改正法附則第5条第3項に規定する経過措置《工事の請負等の税率等に関する経過措置
は適用されません。【答】照会の建設工事等については、それぞれの「部分引渡し」が行われた日により適用税率を判定することとなりますので、

・ 平成26年3月31日までの「部分引渡し」については、旧税率(5%)、

・ 平成26年4月1日以後の「部分引渡し」については、新税率(8%)

が適用されることとなります。

(賃貸借契約に基づく使用料を対価とする資産の譲渡等 )
(不動産賃貸の賃借料に係る適用税率)

問11  当社は、不動産賃貸業を営む会社ですが、平成25年10月1日以後に契約する賃貸借契約(改正法附則第5条第4項に規定する経過措置は適用されないもの)における次の賃貸料に係る消費税の適用税率について教えてください。
① 当月分(1日から末日まで)の賃貸料の支払期日を前月○日としている賃貸借契約で、平成26年4月分の賃貸料を平成26年3月に受領する場合
② 当月分の賃貸料の支払期日を翌月○日としている賃貸借契約で、平成26年3月分の賃貸料を平成26年4月に受領する場合
【答】新消費税法は、経過措置が適用される場合を除き、施行日以後に行われる資産の譲渡等及び課税仕入れ等について適用されます(改正法附則2)。

照会①は、平成26年4月分の賃貸料であり、施行日以後である平成26年4月分の資産の貸付けの対価として受領するものですから、4月末日における税率(8%)が適用されます。

照会②は、平成26年3月分の賃貸料であり、施行日前である平成26年3月分の資産の貸付けの対価として受領するものですから、支払期日を4月としている場合であっても、3月末日における税率(5%)が適用されます。

(未成工事支出金)
(未成工事支出金として経理したものの仕入税額控除)

問12  基通11-3-5《未成工事支出金》では、建設工事等に係る目的物の完成前に行った当該建設工事等のための課税仕入れの金額について未成工事支出金として経理した場合においても、当該課税仕入れ等については、その課税仕入れ等をした日の属する課税期間において仕入税額控除を行うこととなりますが、当該未成工事支出金として経理した課税仕入れ等につき、当該目的物の引渡しをした日の属する課税期間における課税仕入れ等とすることも、継続適用を条件として認められています。
当社は、継続して当該未成工事支出金として経理した課税仕入れにつき、当該目的物の引渡しをした日の属する課税期間における課税仕入れとしていますが、この場合において、平成26年3月31日までの課税仕入れの金額について未成工事支出金として経理したものを施行日以後に完成する日の属する課税期間において課税仕入れとするときは、旧消費税法の規定(旧税率(5%))に基づき、仕入税額控除の計算を行うこととなりますか。

【答】

照会のとおりとなります。

(建設仮勘定)
(建設仮勘定として経理したものの仕入税額控除)

問13  基通11-3-6《建設仮勘定》では、建設工事等に係る目的物の完成前に行った当該建設工事等のための課税仕入れ等の金額について建設仮勘定として経理した場合においても、当該課税仕入れ等については、その課税仕入れ等をした日の属する課税期間において仕入税額控除を行うこととなりますが、当該建設仮勘定として経理した課税仕入れ等につき、当該目的物の完成した日の属する課税期間における課税仕入れ等とすることも認められています。
当社は、当該建設仮勘定として経理した課税仕入れにつき、当該目的物の完成した日の属する課税期間における課税仕入れとしていますが、この場合において、平成26年3月31日までの課税仕入れの金額について建設仮勘定として経理したものを施行日以後に完成する日の属する課税期間において課税仕入れとするときは、旧消費税法(旧税率(5%))に基づき、仕入税額控除の計算を行うこととなりますか。【答】照会のとおりとなります。

(短期前払費用)
(短期前払費用として処理した場合の仕入税額控除)

問14  当社(12月決算法人)は、平成25年12月に、平成26年1月から12月までの1年間の保守契約を締結し、同月中に1年分の保守料金を支払いました。 この保守料金は月極めであり、契約期間が施行日(平成26年4月1日)をまたいでいることから、適用税率は次のとおりとなっています。
・ 平成26年1月から3月分までの保守料金には旧税率(5%)
・ 平成26年4月から12月分までの保守料金には新税率(8%)
当社は、この保守料金について平成25年12月期の法人税の申告において、法人税基本通達2-2-14《短期の前払費用》を適用し、その保守料金の全額をその支払った日の属する事業年度において損金の額に算入することとしています。 ところで、消費税の課税仕入れの時期についても、基通11-3-8《短期前払費用》の規定により、その支出した日の属する課税期間において行ったものとして取り扱うこととされていますが、この場合、当社は平成25年12月課税期間の消費税の申告において、当該保守料金の仕入税額控除の計算はどのように行えばよいのですか。

【答】

平成25年12月課税期間に係る消費税の申告においては、

・ 平成26年1月から3月分までの保守料金(旧税率(5%)適用分)についてのみ、仕入税額控除を行い、

・ 平成26年4月から12月分までの保守料金(新税率(8%)適用分)に係る消費税等相当額については、仮払金として翌期に繰り越し、翌期の課税期間に係る消費税の申告において、新消費税法の規定(新税率(8%))に基づき仕入税額控除を行うこととなります。

なお、1年分の保守料金について旧消費税法の規定(旧税率(5%))に基づき仕入税額控除を行う場合には、翌課税期間において、新税率が適用される部分(平成26年4月分から12月分)について5%の税率による仕入対価の返還を受けたものとして処理した上で、改めて新消費税法の規定(新税率(8%))に基づき仕入税額控除を行うこととなります。

(元請業者が作成する出来高検収書)
(出来高検収書に基づき支払った工事代金の仕入税額控除)

問15  当社(3月決算法人)は、基通11-6-6《元請業者が作成する出来高検収書の取扱い》の規定を適用して、出来高検収書を作成し下請業者に記載事項の確認を受けることにより、当該出来高検収書に基づき課税仕入れを計上して消費税の申告を行っています。
ところで、当社は、平成25年10月1日以後に下請業者との間で建設工事等の請負契約(改正法附則第5条第3項に規定する経過措置は適用されないもの)を締結しているものがあり、下請業者から当該建設工事等の目的物の引渡しを受けるのは、平成26年4月1日以後となることから、工事代金は、新税率(8%)により計算しています。
この取引について、平成26年3月課税期間に係る消費税の申告において、平成26年3月31日までに出来高検収書に基づき支払った工事代金の仕入税額控除を行う予定ですが、平成26年4月1日よりも前の課税期間の申告であることから、5%の税率に基づき、仕入税額控除する予定です。
この場合、税率8%と5%の差額の3%分については、どのように処理すればよいのですか。

【答】

照会の取引については、既に旧消費税法の規定(旧税率(5%))に基づき仕入税額控除をした部分について仕入対価の返還を受けたものとして処理した上で、翌課税期間以後の課税期間に係る消費税の申告において、改めて新消費税法の規定(新税率(8%))に基づき仕入税額控除を行うこととなります。

(参考)
国税庁・財務省ホームページ:
消費税率引上げに伴う資産の譲渡等の適用税率に関するQ&A
平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律(平成24年法律第68号)
消費税法施行令の一部を改正する政令(平成25年政令第56号)
消費税法基本通達(平成7年12月25日付課消2-25ほか4課共同「消費税法基本通達の制定について」通達の別冊)
平成25年3月25日付課消1-9ほか4課共同「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いについて」(法令解釈通達)