粉飾決算を行ったとされるライブドアの手法とは?

粉飾決算を行ったとされるライブドアの手法とは?

(1)ライブドアグループの粉飾決算疑惑
ライブドアグループの粉飾決算容疑は、2004年9月期連結決算において、経常損失が約3億円発生していたにもかかわらず、(1)売上計上の認められないライブドア株式の売却益約38億円を売上高に含め、(2)子会社となる予定の2社の預金をライブドアに付け替えて架空売上約16億円を計上することにより、経常利益を約50億円と見せかけたとされるものです。

(2)いわゆる自己株売却還流スキームについて
ライブドアグループには、ライブドアファイナンスという100%子会社があります。このライブドアファイナンスはファンドへの投資を主要な事業としています。決算書にはその企業の主要な事業から得られた収入を「売上高」として計上します。したがってライブドアファイナンスがファンドから受け取る分配金は「売上高」として計上され、ライブドアグループの連結決算においてもそのまま「連結売上高」として計上されることになります。
しかしここで問題が発生します。ライブドアファイナンスが出資している「ファンド」です。この「ファンド」は3階層になっており、うち下2階層のファンドは「形式上」ライブドアグループの連結対象からはずれています。したがって、最下層のファンドがライブドア株式を売却してキャピタルゲインを得、これをライブドアファイナンスまで分配金として還元して売上計上しても問題はありません。
ところが、東京地検特捜部は、すべてのファンドが「実質的」にはライブドアグループの影響下にあり連結対象に含まれると主張しています。
そうすると、一転して、ファンドからの分配金は売上(損益取引)ではなく自社株を発行して資金調達を行ったのと同じ扱い(資本取引)となるのです。不思議なものです。
なお、スキームで使われた株式交換による買収と株式分割を利用した手法も大変興味深いものですが、ここでは割愛させていただきます。

(3)子会社となる予定の2社に対する架空売上について
ライブドアは(株式交換により)子会社となる予定の2社と契約し、2社から売上代金として約15億円を受け取っています。これも実際に取引実態があり、子会社化される前のものであれば、連結売上となるものです。ところが、取引実態がなく、実質的にはすでに子会社化されたあとの取引とみなされた場合には、これは単なる預金の付け替えとなってしまいます。

(4)両手法の過去の粉飾決算との違い
過去の粉飾決算では、金融機関からの貸し剥がし等を恐れた会社が行うものとされてきました。しかし、ライブドアはキャッシュリッチな会社でありそのような心配はありませんでした。
ライブドアは企業買収の対価として、現金ではなく、自社株を買収企業の株式と交換する「株式交換」を利用することにより、その事業規模と時価総額を増大させることで急激に成長していました。いわゆる「時価総額経営」です。
この「時価総額経営」は、利益を出して株式市場でその成長が高く評価されることによってはじめて成り立つ経営手法です。
しかも今回行われた手法では、ともに現金が増加しています。多少疑わしい取引であっても手許現金が増えているのだから大丈夫だろうという心理が働いても無理はありません。

(5)粉飾決算で支払った税金は戻るのか?
粉飾決算で納めすぎた税金は、更正の請求を行うことにより、還付を受けることができます。
ただし、粉飾という納税者の都合によるものであることから、ペナルティーとして一般の更正の請求とは異なり、税務署長の裁量で、会社がその粉飾を修正する経理処理を行い、かつその処理に基づく確定申告書を提出するまで保留されます。
さらにその法人税額は一括して還付されるのではなく、その後5年間に納付する法人税から順次控除されます。ただし5年経過後に未控除額がある場合には5年経過後に一括還付されます。
なお、更正の請求の期限は、法定申告期限から1年間となっています。この期限を経過している場合には、税務署長は職権により提出期限から5年間は調査のうえ更正することができますので、税務署長へ調査を行うよう嘆願等を行って更正されるのを待つほかなくなります。