少額減価償却資産の特例-消費税率の引き上げにあたって中小企業で使える特別税制

消費税率改正と中小企業で使える税制まとめ

少額減価償却資産の特例-消費税率の引き上げにあたって中小企業で使える特別税制

民間投資活性化等のための税制改正大綱

安倍首相は平成25年10月1日、平成26年4月1日より、予定通り消費税率を5%から8%に引き上げることを正式表明いたしました。

これに伴い、「消費税率及び地方消費税率引き上げとそれに伴う対応について」を閣議決定し、消費税率の引き上げに伴う経済政策として、例年12月にまとめる平成26年度税制改正大綱の一部を前倒しでまとめた「民間投資活性化等のための税制改正大綱」をまとめました。

そこで今回は、消費税率の引き上げに伴い、中小企業で使える特別税制のうち、「少額減価償却資産の特例」についてレポートします。

 

少額減価償却資産の特例

減価償却資産は、通常、法定耐用年数に応じて減価償却費として損金経理しますが、少額のものは取得時に、その取得価額の全額を損金算入(即時償却)することが認められています。

さらに、青色申告書を提出する中小企業者等については、取得価額30万円未満の減価償却資産の即時償却が認められています。

【適用期限】

  • 現行 : 平成26年3月31日まで
  • 「民間投資活性化等のための税制改正大綱」で2年間延長予定(平成28年3月31日まで)

【少額減価償却資産の取扱い】

本則 特例(中小企業のみ)
資産の取得価額 10万円未満 20万円未満 30万円未満
損金算入方法 全額損金算入 3 年間均等償却 全額損金算入
限度額 300万円以下(注)
償却資産税の取扱い 非課税 非課税 課税(合計150万円以上)

(注) この特例は、対象となる減価償却資産の取得価額の合計額が年間300万円を上限としており、その超える部分に係る減価償却資産については適用対象から除外されます。

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(1) 取得価額30万円未満の特例概要
この制度は、「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」といいます。
取得価額が30万円未満である減価償却資産を平成26年3月31日(税制改正により平成28年3月31日まで延長予定)までの間に取得し、事業の用に供した場合に適用されます。

(2) 適用対象
青色申告者である中小企業者等に限られます。

 青色申告書を提出する「中小企業者等」とは
<「中小企業者等」の範囲>
以下のような、法人・個人・組合等が該当します。

  1. 法人
    (イ) 資本金が1億円以下の法人(ただし、大規模法人の子会社は除かれます)
    (ロ) 資本を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1000人以下の法人
  2. 個人
    (ハ)常時使用する従業員の数が1000人以下の個人
  3. その他
    (ニ)中小企業等協同組合、農業協同組合など

※ 個人の場合は、上記の常時使用従業員数のみが対象要件となります。
※ 資本金が1億円以下であっても、大規模法人(資本金1億円超)の子会社は対象外となります。

(3) 対象資産と限度額
対象となる資産は、取得価額が30万円未満の減価償却資産です。
ただし、事業年度における取得価額の合計額が300万円(注)に達するまでの取得価額の合計額が限度となります。
(注)事業年度が1年に満たない場合には300万円を12で除し、これにその事業年度の月数を掛けた金額になります。

(4) 適用手続き
この制度の適用を受けるためには、法人税の確定申告書に『別表十六(七)少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例に関する明細書』を添付する必要があります。

 注意点

  1. この特例は、租税特別措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳との重複適用はできません。
    また、取得価額が10万円未満のもの又は一括償却資産の損金算入制度(20万円未満)の適用を受けるものについてもこの特例の適用はありません。
  2. この特例は、取得価額が30万円未満である減価償却資産について適用がありますので、器具及び備品、機械・装置等の有形減価償却資産のほか、ソフトウェア、特許権、商標権等の無形減価償却資産も対象となり、また、所有権移転外リース取引に係る賃借人が取得したとされる資産や、中古資産であっても対象となります。

(5) 少額減価償却資産の会計処理方法
少額減価償却資産の取得価額の判定は、消費税の会計処理(税込経理方式又は税抜経理方式)によって異なります。
例えば、税込31万3200円(税抜価格29万円)のパソコンを購入した場合、取得価額は税込経理方式の場合は31万3200円、税抜経理方式の場合は29万円でそれぞれ判定されます(消費税率は8%を前提)。