平成29年度税制改正大網ー税制改正の基本的考え方を読むー

平成29年度税制改正大網ー基本的考え方を読むー

平成29年度税制改正大網ー税制改正の基本的考え方を読むー

平成28年12月8日に、自民党と公明党による平成29年度の与党税制改正大綱が取りまとめられ、公表されました。

例年の税制改正は、毎年年末にまとめられる「税制改正大綱」をもとに、税制改正法案が作成されます。法案は、翌年の1月から3月までの通常国会にて審議され、3月に可決され、成立した場合には、3月31日に公布、 4月1日から施行となります。

平成29年度税制改正大綱は、以下の構成となっています。

平成 29 年度税制改正大綱
( 目 次 )
第一 平成 29 年度税制改正の基本的考え方 – 1
第二 平成 29 年度税制改正の具体的内容 – 17
一 個人所得課税 – 17
二 資産課税 – 41
三 法人課税 – 61
四 消費課税 – 92
五 国際課税 – 111
六 納税環境整備 – 121
七 関税 – 129
第三 検討事項 – 131
【補論】今後の国際課税のあり方についての基本的考え方 – 134

冒頭の「税制改正の基本的考え方」では、現政権の政策を反映させた税制改正の趣旨と今後の動向について、改正の要点とともに端的に記載されています。

「税制改正の基本的考え方」原文を以下に掲載していますので、ご一読ください。

個別の改正項目については、おってレポートしていきます。大綱の全文をご覧になりたい方は、平成 29 年度税制改正大綱をご覧ください。

第一 平成 29 年度税制改正の基本的考え方

安倍内閣はこの4年間、デフレ脱却と経済再生を最重要課題として取り組んできた。有効求人倍率は 25 年ぶりの高水準、失業率は 21 年ぶりの低水準、賃金引上げ率は3年連続で今世紀最高水準(2%水準)となるなど、雇用・所得環境は大きく改善している。他方、個人消費や設備投資は力強さを欠く状況にあるほか、新興国経済に陰りが見え、英国国民投票におけるEU離脱の選択等、世界経済においては需要の低迷、成長の減速リスクが懸念される。

個人消費や設備投資に力強さを欠いている背景には、人口減少、少子高齢化といった構造的な問題がある。これらの構造的な問題が、将来の経済の持続可能性等に対する国民の安・悲観につながっている。このため、安倍内閣は、子育てや介護への不安をなくし、女性や若者の活躍を進めることにより、少子高齢化の流れに歯止めをかけ、誰もが生きがいを感じられる「一億総活躍社会」の実現にむけて取り組んでいる。目指すのは、全ての人が挑戦の機会を得て活躍できる全員参加型の社会である。

「一億総活躍社会」を実現し、日本全体の成長力を底上げしていくためには、「働き方改革」と「イノベーション」が両輪となる。多様な働き方が可能となるよう、社会の発想や制度を大きく転換することが求められている。税制においては、経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税改革の第一弾として、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から、配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを行う。また、生産性を抜本的に向上させるために、税制においては、企業による「攻めの投資」を後押しするとともに、コーポレートガバナンスの強化を促すための取組みを進める。「イノベーション」による企業収益の拡大が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資のさらなる増加に結び付くという経済の「好循環」を強化する。税制としても、賃金の引上げを促すための取組みを進める。

アベノミクスの恩恵を未だ十分に実感できていない人々にもアベノミクスの効果を波及させるため、地域中核企業向けの設備投資促進税制を創設する等、中堅・中小事業者を支援するとともに、地方拠点強化税制を拡充する等、地方創生を推進するための措置を講ずる。地方創生の推進に向けて、各地方公共団体が自らの発想で特色を持った地域づくりができるよう、地方分権を推進し、その基盤となる地方税の充実確保を図ることが重要である。その際、公共サービスの対価を広く公平に分かち合うという地方税の応益課税の原則を踏まえる必要がある。

酒税については、類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えてきた。こうした状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、ビール系飲料等の税率格差の解消など、酒税改革に取り組む。

アベノミクスの推進による持続的な経済成長の実現には、海外成長市場の果実の日本国内の成長への取込みも重要である。この観点から、日本企業の健全な海外展開を支えつつ、国際的な租税回避には効果的に対応できるよう、国際課税に関する制度の見直しを進める。その際、「BEPS(注)プロジェクト」の合意事項を引き続き着実に実施するとともに、租税回避防止に向けた国際的な取組みを主導する。
(注)Base Erosion and Profit Shifting:税源浸食と利益移転

また、わが国の経済社会の変化や国際的な取組みの進展状況等を踏まえつつ、担税力に応じた新たな課税について検討を進めていく。

税制改正に当たっては、足下の経済情勢への適切な対応が重要である一方、中長期的課題にも責任をもって取り組まなければならない。税制は経済社会のあり方に密接に関連するものであり、今後とも、格差の固定化につながらないよう機会の平等や世代間・世代内の公平の実現、簡素な制度の構築といった考え方の下、検討を進める。「経済再生なくして財政健全化なし」との基本方針の下、経済再生と財政健全化を両立させることがわが国の最重要課題であり、2020 年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を念頭に置く必要がある。このため、消費税率 10%への引上げを平成 31 年 10 月1日に確実に実施する。あわせて実施される低所得者への配慮のための軽減税率制度について、事業者の準備状況等を検証し、制度の円滑な導入・運用に万全を期す。

以下、平成 29 年度税制改正の主要項目及び今後の税制改正に当たっての基本的考え方を述べる。

1 経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税改革

わが国の経済社会は近年において著しい構造変化を遂げている。個人所得課税についても、経済社会の構造変化を踏まえた改革を行っていく必要があるが、平成 29 年度税制改正においては、喫緊の課題への対応として、就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築する観点から配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを行う。その上で、今後数年をかけて、基礎控除をはじめとする人的控除等の見直し等の諸課題に取り組んでいくこととする。

(1)配偶者控除・配偶者特別控除の見直し

就業調整を意識しなくて済む仕組みを構築するためには、税制、社会保障制度、企業の配偶者手当制度などの面で総合的な取組みを進める必要がある。

税制面においては、このような仕組みとして、配偶者控除を廃止するという考え方や配偶者控除を廃止した上で夫婦世帯を対象に新たな控除を認めるといった考え方がある。しかし、わが国の個人所得課税においては、一定の収入以下の扶養親族を有する場合に、それぞれの事情に応じて納税者の担税力の減殺を調整することとしており、配偶者控除もその調整の仕組みの一つである。また、諸外国においても配偶者の存在を考慮した仕組みが設けられている。こうした点を勘案すれば、配偶者控除を廃止して、配偶者に係る配慮を何ら行わないことには問題がある。また、夫婦世帯を対象に新たな控除を認めるとの考え方もあるが、全ての夫婦世帯を対象とすれば、高所得者の夫婦世帯にまで配慮を行うこととなり、非常に多額の財源を必要とすることから、控除の適用に当たって夫婦世帯の所得に上限を設けることが必要となる。しかし、わが国においては個人単位課税を採用しており、世帯単位で所得を把握することが難しいとの問題がある。また、夫婦世帯を対象に新たな控除を設けることについて、国民の理解が深まっているとは言えない。こうした問題を踏まえると、これらの考え方を具体的な制度改正の案として直ちに採用することは難しい。

他方で、配偶者が就業時間を調整することによって、納税者本人に配偶者控除が適用される 103 万円以内にパート収入を抑える傾向があると指摘されている(いわゆる「103 万円の壁」)。これについては、配偶者特別控除の導入によって、配偶者の給与収入が 103 万円を超えても世帯の手取り収入が逆転しない仕組みとなっており、税制上、いわゆる「103 万円の壁」は解消している。それにもかかわらず収入を抑える傾向が生じる要因として、「103 万円」という水準が企業の配偶者手当制度等の支給基準に援用されていることや、いわゆる「103 万円の壁」が心理的な壁として作用していることが指摘されている。生産年齢人口が減少を続け人手不足と感じている企業が多い中、パート収入を一定の範囲内に抑えるために就業時間を抑える傾向は、最低賃金が引き上げられていくにつれ、更に強まるのではないかということが懸念される。

このような就業調整をめぐる喫緊の課題に対応するため、所得税・個人住民税における現行の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを行う。具体的には、所得税の場合、配偶者特別控除について、所得控除額 38 万円の対象となる配偶者の合計所得金額の上限を 85 万円(給与所得のみの場合、給与収入 150 万円)に引き上げるとともに、現行制度と同様に、世帯の手取り収入が逆転しないような仕組みを設ける。この給与収入 150 万円という水準は、安倍内閣が目指している最低賃金の全国加重平均額である 1,000 円の時給で1日6時間、週5日勤務した場合の年収(144 万円)を上回るものである。

こうした見直しは、働きたい人が就業調整を行うことを意識しないで働くことのできる環境づくりに寄与するものであり、また、人手不足の解消を通じて日本経済の成長にも資することが期待される。

同時に、配偶者控除・配偶者特別控除について、担税力の調整の必要性の観点から、これらの控除が適用される納税者本人の合計所得金額に所得制限を設けることとし、国・地方を通じた税収中立を確保する。こうした所得制限は、後述する所得再分配機能の回復に資するものであるが、その際、所得に応じた税負担の差をなだらかにする観点から、所得控除額を所得に応じて逓減・消失させていく仕組みとする。今回の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しによる個人住民税の減収額については、全額国費で補填する。

就業調整を意識しなくて済む仕組みの構築は、税制だけで達成できるものではなく、社会保障制度などの関連する制度・政策における取組みが重要である。本年 10 月より被用者保険の適用拡大が実施されているが、短時間労働者の就業調整を防ぐなどの観点から今後も更なる適用拡大に向けた検討を着実に進めていくこととしており、今後とも就業調整につながる要因を取り除いていくことが重要である。

また、配偶者が一定の収入以下であることを要件とする企業の配偶者手当制度等も就業調整の大きな要因の一つである。配偶者手当制度等を有している企業に対しては、今般の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しを踏まえ、労使の真摯な話し合いの下、就業調整問題を解消する観点からの見直しを行うことを強く要請する。

(2)今後の個人所得課税改革の方向性

上記の配偶者控除・配偶者特別控除の見直しは、個人所得課税改革の第一弾であり、今後も改革を継続していく。

経済社会の著しい構造変化の中で、近年、結婚や出産をする経済的余裕がない若者が増加しており、こうした若い世代や子育て世帯に光を当てていくことが重要である。そのため、税制、社会保障制度、労働政策等の面で総合的な取組みを進める必要があるが、個人所得課税においては、所得再分配機能の回復を図ることが重要であり、各種控除等の総合的な見直しを丁寧に検討していく必要がある。

基礎控除をはじめとする人的控除等については、現在、「所得控除方式」を採用しているが、高所得者ほど税負担の軽減効果が大きいことから、主要諸外国における負担調整の仕組みも参考にしつつ、来年度の税制改正において控除方式のあり方について検討を進める。具体的には、収入にかかわらず税負担の軽減額が一定となる「ゼロ税率方式」や「税額控除方式」の導入のほか、現行の「所得控除方式」を維持しつつ高所得者について税負担の軽減額が逓減・消失する仕組みの導入が考えられる。

雇用の流動化や、労働者に近い形態で働く自営業主の割合の増加など、働き方が様々な面で多様化している。現在の個人所得課税は、所得の種類に応じた負担調整の仕組みを採用しているが、人的な事情に配慮を行いつつ、ライフスタイルに合わせて多様な働き方を自由に選択できるようにすることが重要である。こうした観点から、給与所得控除などの「所得の種類に応じた控除」と基礎控除などの「人的控除」のあり方を全体として見直すことを検討していく。

老後の生活など各種のリスクに備える自助努力を支援するための企業年金、個人年金、貯蓄・投資、保険等に関連する諸制度のあり方について、社会保障制度を補完する観点や働き方の違い等によって有利・不利が生じないようにするなど公平な制度を構築する観点から幅広い検討を行う。

個人住民税については、地方公共団体が提供する行政サービスの財源確保の面で最も重要な税であるとともに、応益課税の観点から広く住民が負担を分かち合う仕組みとなっていることも踏まえ、制度のあり方を検討していく。その際、個人住民税は、比例税率となっているため、控除方式の選択による税負担調整の効果に制約があることに留意する必要がある。

これらの改革に当たっては、個人所得課税の税制全体における位置づけや負担構造のあるべき姿について検討する必要があり、丁寧に進めていくこととする。

2 デフレ脱却・経済再生に向けた税制措置

600 兆円経済を実現するため、企業の「攻めの投資」や賃上げの促進など経済の好循環を促す取組みを進める。具体的には、税制としても、「イノベーション」や中堅・中小事業者による設備投資、コーポレートガバナンスの強化を促すための取組みを進めるとともに、賃金の引上げを促していく。昨年度までの法人税改革に引き続き講じたこうした措置を受けて、企業経営者がマインドを変え、賃上げや手元資金を活用した投資拡大などに積極的に取り組むことを期待する。

(1)競争力強化のための研究開発税制の見直し

600 兆円経済を実現するためには、イノベーションを促すことにより、付加価値の高い財・サービスを生み出していくことが重要である。このため、研究開発投資を増加させるインセンティブを強化する観点から、2020 年までに官民合わせた研究開発投資を対GDP比4%以上とする政府目標も踏まえ、研究開発税制の見直しを行う。具体的には、総額型の控除率を試験研究費の増減に応じたものとする。また、IoT、ビッグデータ、人工知能等を活用した「第4次産業革命」による新たなビジネス開発を後押しする観点から、研究開発税制の対象に、「第4次産業革命型」のサービス開発のための試験研究に係る一定の費用を新たに追加する。

「第4次産業革命」が進展する中、オープンイノベーションがますます重要となっている。平成 27 年度税制改正により拡充したオープンイノベーション型の研究開発に対する措置や私立大学における受託研究の非課税措置について、使い勝手を向上すべく、共同研究等の実態を踏まえ、対象費用の追加・変更の柔軟化や手続きの簡素化など、要件の緩和を図る。

(2)賃上げを促すための所得拡大促進税制の見直し

企業収益の拡大が雇用の増加や賃金上昇につながり、それが消費や投資の増加に結び付くという経済の「好循環」を強化する必要がある。このため、所得拡大促進税制について、企業に更なる賃上げインセンティブを与える機能を強化する観点から、高い賃上げを行う企業への支援を強化する。

(3)コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備

わが国経済の好循環を確かなものとするためには、コーポレートガバナンスを強化することにより、中長期的な企業価値の向上に資する投資など、「攻めの経営」を促進することが重要である。こうした観点を踏まえ、企業と投資家の対話の充実を図るため、上場企業等が株主総会の開催日を柔軟に設定できるよう、法人税等の申告期限の延長可能月数を拡大する。また、経営陣に中長期の企業価値創造を引き出すためのインセンティブを付与することができるよう、業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とする。併せて、経営戦略に基づく先を見据えたスピード感のある事業再編等を加速するため、特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ等の円滑な実施を可能とする税制の整備を行う。

(4)その他考慮すべき課題

① 租税特別措置については、特定の政策目的を実現するために有効な政策手法となりうる一方で、税負担の歪みを生じさせる面があることから、真に必要なものに限定していくことが重要である。このため、毎年度、期限が到来するものを中心に、各措置の利用状況等を踏まえつつ、必要性や政策効果をよく見極めた上で、廃止を含めてゼロベースで見直しを行う。また、租税特別措置の創設・拡充を行う場合は、財源の確保や、全体の項目数をいたずらに増加させないことに配意する。

② 公益法人等課税については、非収益事業について民間競合が生じているのではないかとの指摘がある一方で、関連制度の見直しが行われており、その効果をよく注視する。あわせて、収益事業への課税において、軽減税率とみなし寄附金制度がともに適用されることが過剰な支援となっていないかといった点について実態を丁寧に検証しつつ、課税のあり方について引き続き検討を行う。

③ 住宅市場に係る対策については、住宅投資の波及効果に鑑み、数次にわたる経済対策を含むこれまでの措置の実施状況や今後の住宅市場の動向等を踏まえ、必要な対応を検討する。

④ 現行のNISAが積立型の投資に利用しにくいことを踏まえ、家計の安定的な資産形成を支援する観点から、少額からの積立・分散投資を促進するための積立NISAを新たに創設する。創設に当たっては、投資初心者でも理解できるよう、複数の銘柄の有価証券等に対して分散投資を行うなどの要件を満たし、特定の銘柄等によるリスクの集中の回避が図られた投資信託に商品を限定するとともに、実践的な投資教育をあわせて推進することが重要である。また、非課税投資の期間が長期にわたることも踏まえ、制度の適正な
利用について定期的な点検ができる体制の構築を前提とする。
また、前述の個人所得課税改革において、老後の生活など各種のリスクに備える自助努力を支援する公平な制度の構築に向けた検討を行う中で、NISA全体に係る整理を行う。こうした方針に沿って、制度の簡素化や税制によって政策的に支援すべき対象の明確化の観点から、複数の制度が並立するNISAの仕組みについて、少額からの積立・分散投資に適した制度への一本化を検討する。

⑤ 金融所得に対する課税のあり方について、税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から、諸外国の制度や市場への影響も踏まえつつ、必要な検討を行う。

3 中堅・中小事業者の支援、地方創生の推進

(1)中堅・中小事業者の支援

① 地域中核企業向け設備投資促進税制の創設

未だアベノミクスの恩恵を十分に実感できていない地域の隅々までアベノミクスの効果を波及させ、地域経済に好循環をもたらすため、「ローカルアベノミクス」に取り組む必要がある。こうした観点から、地域経済を牽引する中核企業等が、地域経済に波及効果のある新たな事業に挑戦するために行う設備投資を対象に、特別償却又は税額控除ができる制度を創設する。

② 中小企業向け設備投資促進税制の拡充

あらゆる政策を総動員してアベノミクスを一層加速する中で、中小事業者の「攻めの投資」を後押しするとともに、わが国のGDPの約7割を占めるサービス産業の生産性の向上を図るため、サービス産業も含めた中小企業が行う生産性の向上につながる設備投資への支援を拡充する。具体的には、中小企業投資促進税制のうち、生産性の高い先進的な設備や生産ライン等の改善に資する設備への投資を対象に、即時償却又は税額控除ができる上乗せ措置について、中小企業等経営強化法の認定計画に基づく制度に改組した上で、これまで対象外であった器具備品及び建物附属設備を対象設備に追加する。

③ 地域の中小企業による設備投資の支援

地域の中小企業による設備投資の促進に向け平成 28 年度税制改正において3年間の時限措置として機械・装置を対象に創設した償却資産に係る固定資産税の特例措置についてはその期限の到来をもって終了するものとし、GDPの約7割を占めるサービス産業の賃金改善と生産性向上に向けて、残余の2年間に限り、市町村財政への影響を最小限にするよう地域・業種を限定した上で、その対象に一定の工具、器具・備品等を追加する。
なお、固定資産税が市町村財政を支える安定した基幹税であることに鑑み、償却資産に対する固定資産税の制度は堅持する。

④ 中小企業の賃上げを促すための税制上の措置

中小企業にも賃上げの動きの広がりが見られるものの、依然大企業とは差がある状況である。こうした状況を踏まえ、中小企業による更なる賃上げを後押しし、経済の「好循環」を強化する観点から、所得拡大促進税制について、高い賃上げを行う中小企業に対して、大企業を上回る支援の強化を行う。

⑤ 事業承継税制の見直し

非上場株式等に係る相続税等の納税猶予制度、いわゆる事業承継税制については、平成 25 年度税制改正において雇用確保要件の見直し等を行った結果、平成 27 年の認定件数は改正前に比べ約3倍の水準となっている。他方、中小企業経営者の高齢化が進行していること等を踏まえれば、早期かつ計画的な事業承継の更なる促進が重要であり、今般、制度を更に使いやすくするための見直しを行う。
具体的には、災害による被害を受けた場合や主要取引先の倒産等により売上が減少した場合には、雇用確保要件等を緩和する。また、相続時精算課税制度との併用を認め、生前贈与を行いやすくする。こうした見直しを行った上で、制度の一層の普及・啓発に努め、活用を促していく。
また、取引相場のない株式について、相続税法の時価主義の下、より実態に即した評価の見直しを行う。

(2)地方創生の推進

① 地方拠点強化税制の拡充

東京一極集中の是正等を図るとともに、地方における質の高い雇用を促進するため、地方拠点強化税制について、無期かつフルタイムの新規雇用に対する税額控除額を上乗せする等の拡充を行う。

② 到着時免税店の導入

旅客の利便性の向上等の観点から、全国各地の空港等の到着エリアにおける免税店(いわゆる到着時免税店)の導入を可能とし、到着時免税店において購入した物品を現行の携帯品免税制度の対象に追加する。

(3)酒税改革

類似する酒類間の税率格差が商品開発や販売数量に影響を与えている状況を改め、酒類間の税負担の公平性を回復する等の観点から、ビール系飲料や「醸造酒類」の税率格差の解消、「ビール」の定義拡大など、酒税改革に取り組む。

この改革は、厳しい財政状況や財政物資としての酒類の位置付け等を踏まえ、税収中立で行う。税率の見直しに当たっては、消費者や酒類製造者への影響に配慮して、十分な経過期間を確保しつつ段階的に進めることとし、さらに、見直しの都度、経済状況を踏まえ、酒税の負担の変動が家計に与える影響等を勘案した上で実施する。
今回の酒税改革により、酒類製造者が消費者にとって真に魅力ある商品の開発に経営資源をシフトすることや、地域の特色を活かした魅力ある商品の開発が進み、地方創生の牽引役となることが期待される。さらに、国際的にも評価される商品の開発が進み、日本産酒類のブランド価値の向上や、日本の酒類産業の国際競争力の強化にもつながる。

① 税率構造の見直し

イ ビール系飲料(「ビール」、「発泡酒」、「新ジャンル」)の税率について、平成 38 年 10 月1日に、1kℓ当たり 155,000 円(350 mℓ換算 54.25 円)に一本化する。
これにより、「ビール」の税率(現行1kℓ当たり 220,000 円(350 mℓ換算 77 円))は価格比で見て戦後最低水準まで引き下がり、国際的にも遜色の無い水準となる。他方、特に「新ジャンル」の税率(現行1kℓ当たり80,000 円(350 mℓ換算28 円))が引き上がる中で、消費者の負担が急激に変動することとならないよう、税率見直しは三段階に分けて行い、第一段階は平成 32 年 10 月1日に、第二段階は平成 35 年 10 月 1 日に実施する。

ロ ビール系飲料以外の「その他の発泡性酒類」(いわゆるチューハイ等)の税率(現行1kℓ当たり 80,000 円(350mℓ換算 28 円))については、「果実酒」など他の酒類の税率とのバランスや、アルコール健康障害対策基本法の下での不適切飲酒の誘因防止の取組も踏まえ、1kℓ当たり100,000 円(350 mℓ換算 35 円)に引き上げることとし、酒税の税率構造の見直しが完成する平成 38 年 10 月1日に実施する。なお、これにあわせて、低アルコール分の「蒸留酒類」及び「リキュール」に係る特例税率等についても、所要の見直しを行う。

ハ 「醸造酒類」については、税負担の公平性の観点から、「清酒」(現行1kℓ当たり120,000 円)と「果実酒」(現行1kℓ当たり80,000 円)との間の税率格差を解消することとし、平成 35 年 10 月1日に、税率を1kℓ当たり100,000 円に一本化する。税率見直しは二段階に分けて行い、第一段階は平成 32 年 10 月1日に実施する。なお、「果実酒」の税率引上げに当たっては、小規模な果実酒製造者に対する措置を検討する。

ニ 税率の段階的な見直しについては、その都度、経済状況を踏まえ、酒税の負担の変動が家計に与える影響等を勘案して検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。

② 酒類の定義の見直し

現行の「ビール」の定義は、麦芽比率は 67%以上とされ、麦芽、ホップ及び水以外に使用できる副原料は、麦、米、とうもろこし等に限定されている。多様な副原料を用いた商品や麦芽比率が若干低い商品は、「ビール」と同じ税率が適用されるものの、分類上は「発泡酒」となり、「発泡酒」と表示して販売することが求められる。今回の改革においては、外国産ビールの実態や、地域の特産品を用いた地ビールの開発を後押しする観点を踏まえ、平成 30 年4月1日に、麦芽比率 50%以上の商品や、副原料として果実(果肉・果皮)や一定の香味料を少量用いている商品を「ビール」の定義に追加する。なお、その際、「ビール」及び「果実酒」の製法の緩和も行う。
また、現行の「発泡酒」の定義は、麦芽又は麦を原料の一部とする商品とされている。今回の改革においては、性質が共通する商品間の税負担の公平性を回復するため、「新ジャンル」、さらには将来的に開発されうる類似商品も「発泡酒」の定義に取り込めるよう、新たに、ホップを原料の一部とする商品や、色度や苦味価(くみか(苦味の程度))が一定以上の商品を「発泡酒」の定義に追加することとし、ビール系飲料の第二段階の税率見直しとあわせて、平成 35 年 10 月1日より実施する。

③ 訪日外国人旅行者等向けに製造場で販売した酒類に係る免税制度の創設

地方創生の推進や日本産酒類のブランド価値向上等の観点から、「酒蔵ツーリズム」の魅力を高めていくため、酒類製造者が輸出酒類販売場(仮称)の許可を受けた製造場において外国人旅行者等向けに販売した酒類について酒税を免税とする制度を導入する。

④ 構造改革特区における酒類の製造免許に係る最低製造数量基準の緩和

地域の特色を活かした酒類の製造を後押ししていく観点から、構造改革特区の枠組みを活用して、「単式蒸留焼酎」の製造過程で副次的に製成される少量の初垂れ(はなたれ(酒税法上の「原料用アルコール」))を特区内で提供する場合や、地域の特産品を原料として「単式蒸留焼酎」を少量製造しようとする場合に、各酒類の製造免許に係る最低製造数量基準を適用しないこととする。

4 経済活動の国際化・ICT化への対応と租税回避の効果的な抑制

(1)国際課税に関する制度の見直し

国際課税については、本大綱の「補論」として盛り込んだ「今後の国際課税のあり方についての基本的考え方」を踏まえ、日本企業の健全な海外展開を支え、その果実の国内経済への還流を促すとともに、租税回避に対してはこれまで以上に効果的に対応していく。個別の制度改正に当たっては、①「BEPSプロジェクト」の合意事項の着実な実施を通じた国際協調の推進、②「経済活動や価値創造の場と税が支払われるべき場所を一致させる」との「BEPSプロジェクト」の基本的考え方を踏まえた、健全な海外展開を歪める誘引の除去、③税に関する透明性の向上に向けた国際的な協調、という3つの基本方針の下で臨む。

平成 29 年度税制改正においては、外国子会社を通じた租税回避を抑制することを目的とする「外国子会社合算税制」を総合的に見直す。具体的には、「外国子会社の経済実態に即して課税すべき」との「BEPSプロジェクト」の基本的考え方を踏まえ、経済実体がない、いわゆる受動的所得は合算対象とする一方で、実体ある事業からの所得であれば、子会社の税負担率にかかわらず合算対象外とする。その際、例えば、金融機関が本業から得る金融所得は合算対象から除く等、企業のビジネス実態を十分に踏まえて合算対象を決定するとともに、企業にとっての予見可能性にも留意する。また、租税回避に関わっていない企業の子会社に事務負担が発生しないよう、所要の措置を講ずる。

(2)国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲の見直し

経済のグローバル化に伴い、日本で就労する外国人が増加していることへの対応として、一時的に日本に住所を有する外国人同士の相続等については、国外財産を相続税等の課税対象としないこととする。このことは、高度外国人材等の受入れの促進にもつながる。
他方、租税回避を抑制するため、相続人等又は被相続人等が 10 年以内に国内に住所を有する日本人である場合は、国内財産及び国外財産を相続税等の課税対象とする等の見直しを行う。

(3)仮想通貨の消費税非課税化

資金決済に関する法律の改正により仮想通貨が支払の手段として位置づけられることや、諸外国における課税関係等を踏まえ、仮想通貨の取引について、消費税を非課税とする。

5 車体課税の見直し

一部の自動車メーカーが燃費性能を偽った今回の不正は、エコカー減税制度の根幹を揺るがす問題である。燃費不正対策を強化するため、道路運送車両法を改正するとともに、税制においても、燃費不正が生じた場合の納税義務者の特例等の措置を講ずる。

自動車取得税及び自動車重量税に係るエコカー減税については、燃費性能がより優れた自動車の普及を促進する観点から、対象範囲を平成 32 年度燃費基準の下で見直し、政策インセンティブ機能を強化した上で2年間延長する。その実施に当たっては、段階的に基準を引き上げることとする。なお、自動車重量税については、ガソリン車への配慮等の観点から、時限的・特例的な措置を講ずる。

エコカー減税は、燃費水準の向上により、見直しを行わないと、政策インセンティブ機能が低下し、税収も減少していくという性質を有する。他方、道路等の維持管理・更新や防災・減災等の推進に、国・地方において多額の財源が必要となることが見込まれる。今後、適用期限の到来にあわせ、見直しを行うに当たっては、政策インセンティブ機能の強化、実質的な税収中立の確保、原因者負担・受益者負担としての性格、応益課税の原則、市場への配慮等の観点を踏まえることとする。また、次のエコカー減税等の適用期限到来に向けて、クリーンディーゼル車について、普及の状況や政策的支援の必要性等を総合的に勘案して、エコカー減税制度等における扱いを引き続き検討し、結論を得る。

平成 28 年度末で期限切れを迎える自動車税及び軽自動車税のグリーン化特例(軽課)については、重点化を行った上で2年間延長する。また、環境性能割導入以後のグリーン化特例(軽課)については、平成 26 年度及び平成 28 年度与党税制改正大綱に沿って必要な検討を行い、平成 31 年度税制改正において具体的な結論を得る。

なお、消費税率 10%への引上げの前後における駆け込み需要及び反動減対策に万全を期す必要があり、自動車をめぐるグローバルな環境、自動車に係る行政サービス等を踏まえ、簡素化、自動車ユーザーの負担の軽減、グリーン化、登録車と軽自動車との課税のバランスを図る観点から、平成 31 年度税制改正までに、安定的な財源を確保し、地方財政に影響を与えないよう配慮しつつ、自動車の保有に係る税負担の軽減に関し総合的な検討を行い、必要な措置を講ずる。

6 森林吸収源対策

2020 年度及び 2020 年以降の温室効果ガス削減目標の達成に向けて、森林吸収源対策及び地方の地球温暖化対策に関する安定的な財源の確保について、以下の措置を講ずる。

(1)エネルギー起源 CO2 の排出抑制のための木質バイオマスのエネルギー利用や木材のマテリアル利用を普及していくことは、森林吸収源対策の推進にも寄与することから、地球温暖化対策のための税について、その本格的な普及に向けたモデル事業や技術開発、調査への活用の充実を図るため、経済産業省、環境省、林野庁の3省庁は、引き続き連携して取り組む。

(2)森林整備や木材利用を推進することは、地球温暖化防止のみならず、国土の保全や地方創生、快適な生活環境の創出などにつながり、その効果は広く国民一人一人が恩恵を受けるものである。しかしながら、森林現場には、森林所有者の特定困難や境界の不明、担い手の不足といった、林業・山村の疲弊により長年にわたり積み重ねられてきた根本的な課題がある。その対策に当たっては、森林現場に近く所有者に最も身近な存在である市町村の果たす役割が重要となる。
このため、市町村による林地台帳の整備を着実に進めるとともに、公益的機能の発揮が求められながらも、自然的・社会的条件が不利であることにより所有者等による自発的な間伐等が見込めない森林の整備等に関する市町村の役割を明確にしつつ、地方公共団体の意見も踏まえながら、必要な森林関連法令の見直しを行うこととし、以下のような施策の具体化を進める。

① 市町村から所有者に対する間伐への取組要請などの働きかけの強化
② 所有者の権利行使の制限等の一定の要件の下で、所有者負担を軽減した形で市町村自らが間伐等を実施
③ 要間伐森林制度を拡充し、所有者が不明の場合等においても市町村が間伐を代行
④ 寄附の受入れによる公的な管理の強化
⑤ 地域における民間の林業技術者の活用等による市町村の体制支援

このような施策を講じることにより市町村が主体となって実施する森林整備等に必要な財源に充てるため、個人住民税均等割の枠組みの活用を含め都市・地方を通じて国民に等しく負担を求めることを基本とする森林環境税(仮称)の創設に向けて、地方公共団体の意見も踏まえながら、具体的な仕組み等について総合的に検討し、平成 30 年度税制改正において結論を得る。

7 災害に関する税制上の措置

災害が発生した際の被災者や事業者への対応については、国税通則法、災害減免法や各税法において、申告、納付期限の延長や、税の減免などが措置されている。また、地方税については、地方公共団体による条例減免も行われてきた。その上で、阪神・淡路大震災及び東日本大震災の際には、特別立法等により、追加的な税制上の対応を行ってきた。

このように、きめ細やかに対応するとの考え方の下、被害の状況や規模などを踏まえ、これまで災害ごとに税制上の対応を検討してきたところである。しかしながら、近年災害が頻発していることを踏まえ、被災者や被災事業者の不安を早期に解消するとともに、復旧や復興の動きに遅れることなく税制上の対応を手当てする観点から、災害への税制上の対応の規定を常設化する。

8 円滑・適正な納税のための環境整備

国税犯則調査手続について、経済活動のICT化の進展等を踏まえ、電磁的記録の証拠収集手続を整備するとともに、関税法に定める犯則調査手続等を踏まえて調査手続等を整備し、あわせて規定を現代語化した上で国税通則法へ編入する等、所要の見直しを行う。地方税犯則調査手続についても、国税犯則調査手続の見直しを踏まえた規定の整備を行う。
地方税における電子納税の推進のため、地方公共団体が共同で収納を行う方策について、地方公共団体の意向に十分配慮しつつ、検討を行う。

また、税制を円滑かつ公平に執行するため、必要な定員の確保等の税務執行体制の一層の充実を図る。

9 その他

平成 28 年度税制改正大綱において「平成 29 年度税制改正において結論を得る」こととしていた介護保険料等に係る社会保険料控除の見直しについては、世帯主が世帯員の分もまとめて納付することが一般的な国民年金保険料の納付等に影響が及ぶ可能性があることを踏まえ、介護保険制度の見直しにより対応が図られる見込みであることに鑑み、税制改正は行わないこととする。

(参考)自民党ホームページ : 平成29年度税制改正大綱